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五日目 日記

地面へと広げられた大きいレジャーシートに食器が規則正しく並べられていく。温められた食器に、ポットが三つ。三種類のお茶が用意されて時を待っている。そばにはお茶請け代わりのプチサイズのラスクが数個添えられてあった。
手品めいた手付きでどこからかこんなものを用意しているのを見て、ベラは呆れを含んだ感嘆を零す。胸を張るように自慢げにマイトは応え、続く問いにそのまま人差し指で自らの口元を抑えた。

「立派なもんねーどっから出したの、こんなに」
「ふふ、男子所持するところに秘密あり」
「なによそれ……まあいいわ、あの娘はどうしたの?」

そう遠くない位置で羽がパタパタと動いているのが見えた。

「あそこで商談中。ついていこうと思ったんだけどさ、一人の方が早く終わるんだって。僕はその、無駄話が多すぎるみたいで」
「なんか意外ね」
「僕が思ったよりもお喋りだった?」
「あー、そうじゃなくて。意外としっかりしてるというか、甘々ラブラブな雰囲気なのかと思ってたのよ。邪魔者か除け者にならないかって、ちょっと心配してたんだけど」

ぽつりと独り言のようなベラの呟きにマイトは手元を止める。きょとんとした表情を見せて暫しマイトの顔が悪戯めいたように目を細め、それから何事もなかったかのように作業を再開、何気ない声で呟いた。

「そんな心配してたんだね、可愛いんだ」
「な……あのねー。協調できるかどうか心配だった、ってことなのよ私が言いたいのは!」
「ふふふ、わかってるよ。でもその心配なら流石に杞憂かな。こんなところじゃ何処にいたってそれなりに気を張っていないといけないからね。愛情のようなものをなんとなく示し合う関係はそれなりの栄養にはなっても、安らかに眠れるほどの満腹感は得られないのさ」
「よくわからないわね」
「人を好きになるのは簡単だってこと、会っているときだけ好きになるのはもっと容易い。けどね人を守ること、そして守っていることを相手に感じさせるのは容易じゃない。誰も彼も好意を寄せる相手を見守っていたいとは思っているとは思うんだけどね。今ここで必要なのは彼女を安心させること、それに必要なこと」

切れた言葉の代わりにカップに注がれるお茶の音が耳に滑り込む。マイトはそのお茶をベラへと差し出して彼女が受け取るのを待った。差し出す手がカップ越しに交わされる時に視線も交わる。

「だから、守るための最大努力」
「いーわねー。私も誰かに守ってもらいたいわ」

受け取ったカップをそのままにベラは如何ともしがたい顔ですねたようにつまらなさそうに言葉を唇にのせた、その声音と裏腹に表情は柔らかく笑う。マイトは立ち上がり商談の終わった彼女を迎えるように一歩踏み出す、そのまま肩越しのベラにウインク一つ。

「それにさ、ギャラリーが少ないところでイチャついても楽しくないじゃないか」

テーマ : 栗鼠ゲーム
ジャンル : オンラインゲーム

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