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四日目の日記

時は踊る、騒がしく場を乱しては風が吹き抜けるように静寂に返る。
倒れているのは二つの影、奇妙な草と一匹の野犬。立っているのは満身創痍の野犬。
対する彼らは味方の犠牲者は出ないうちに戦闘は収束を迎えようとしていた。悪くない結果だった。
「……まだ、やるかい?」
目の前の野犬を見据えて語りかける。今にも倒れそうな震える四肢、唸り声を上げてこちらを睨む。
「そうか、君は戦士なんだな。ここは僕らと君の戦場、退くことはできないというわけか――」
赤い髪を揺らして彼は息を抜くように微笑む。応えるように野犬は震える四肢を抑え付けて力をこめた。避けられない戦い。腕をだらりと垂らした自然体のままその時を待つ、野犬の筋肉一つの動きも見逃さない視線で。張り詰めた空気が流れ出すまで、さほどの時間はかからなかった。最後の力を振り絞って襲い掛かる爪と牙、その動きを臆することもなく微動だにせず待つ。目前に迫ったそれを半歩身を捻るように避ける。緊張と覚悟を解き放ち、回避成功の快感と自信が身体を駆け抜けた。
捨て身の一撃を避けられ、野犬の身体は崩れるように着地した。その背を撫でるようにそっと掌が乗せられる、魔力が練り上げられその掌に収束し時が躊躇うように両者の動きを止めた。視線も合わさぬままに想いが巡り触れ合う。
『どうした? 俺の負けだ早くやれ』
そっと囁くように野犬が呟いた。その声は少年のような高さだった、まだ若いのだろう。その声を聞いてさらに鈍る狙いの手。抑え付けるように手が添えられる。
「勝敗は決した、これで退いてくれ――そして二度と僕らの前には現れないでくれ」
『できぬ相談だ……今ここで俺を逃せばいつかお前らの喉にかぶりついてやる。勝負とは非情なものだ打ち倒さねば決着がつかぬ。そんな不器用な生き方しかできぬのだ俺達は……さあ、やれ! 俺を打ち倒し先にいけ!』
「そんなこと、できるものか! 君は立派な戦士だ、僕は君をこんな風に打ち倒すことなんて……!」
『甘い! 甘いやつめっ! そんなだからお前らは……』
熱の入るエウリーネの野犬Bのアテ声、即興のやりとりに感じ入り泣きじゃくるマイト。それをなんともかんとも言えない心持ちで見ているベラの腕が振り上げられ、しなる鞭とともに振り下ろされた。キャインと悲鳴一つ残して打ち据えられ倒れる野犬B。

+大+『あ』-大-

気の抜けた声とともに掌に練り上げていた魔力が緊張から解かれて放たれた。倒れた野犬Bをぼろくずのようにバウンドさせて吹き飛ばした。口から舌を出してぐったりと地に伏す野犬B。
「死んだかしらねー」
「犬殺し……」
「トドメを指したのはアンタ」
「ううう、不可抗力だー。ひーどーいー」
あきれ声で呟くベラにビシッと指を突きつけられて大粒の涙をためながら抗議するマイト。
「こんな傷だらけの状態でなにを遊んでるのよ、アンタたちはーっ」
疲れた声を精一杯に上げて今度はエウリーネに突きつけた指をぐるりと巡らす。
「た、楽しくてつい……えへ」
「……もういいわ」
頭痛を覚えそうな眩暈を感じてベラは突きつけた指を下ろした。とりあえずは勝った、それでいいかと思いながら。

テーマ : 栗鼠ゲーム
ジャンル : オンラインゲーム

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