FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

【偽島 終章 三話 / 君に 高く(HoB Last Stage)】

【注】
いきなり文章が前面手直しされたりもしますが
「ちっ、あいつめしくじりやがったな! ファック!」
と、寛大な心で胸の内に留めて置いてください。

【三話 登場人物】
Eno:0721 マイト・カルフール(Axion 隊長 魔術師人形)
Eno:0314 葛葉 玖条(Axion 隊員 戦闘狂化け狐)

Eno:0054 クレイグ=レイヴァース(Axion 副長 古代種戦士)
Eno:0214 月城 紗雪(Axion 隊員 羽根つきお嬢様)
Eno:0704 ベラ・ベアトリクス(Axion 隊員 守銭奴)

< * * * >

【三話 / 君に 高く(Heat of Battle Last Stage)】

多目的魔石でエントリーナンバーと所在を確認する。
Eno:0015 Eno:0054 Eno:0214 Eno:0314 Eno:0704 全員遺跡外表示だ。
すぐにマイトも遺跡外へと帰還した、雨に煙る景色が眩しい天気の下に変わる。
時刻は昼過ぎといったところか、顔を上げてそこに仲間の顔を見つけた。
「ベラ、待っててくれたのか」
「ええ、心配してたのよ――アンタが再起不能なんて話を聞いたから」
「玖条から聞いたんだな」
「そうよ。説明はしてもらえるんでしょうね?」
「……玖条は?」
「二人が追って行ったわ。あ、それとユーリが風邪で寝込んでる。
 屋敷に連れて行って大事はないと思うけど……まだこんな話するわけにもね」
「ああ、とりあえず玖条に会いにいく」
「わかった……その前に、説明してよ。どういうことなの?」
「多分、全部玖条の言った通りだよ」
「全部?」
「僕のこの島での冒険は終わる――ところで、頼みがあるんだ」

「あんたバカでしょ」
「……なんとでも言っていいよ」
ベラは先ほどから延々と似たような言葉を浴びせ続けていた。それを背に丸めながら、マイトは数歩先を疲れた足取りで歩く。彼が彼女に頼んだ頼みとはずばり金銭。地底湖一番街で出品されていた、ある種の品物を落札するためにかなりの大金を払ったのだった。
「あんたね……めちゃくちゃ高かったんだから、しっかりやんなさい!」
歯をかち合わせるような激しい口調で丸まったマイトの背中を叩く。勢いに押されてつんのめりかけるのを堪え地底湖一番街で落札した物を掲げた。縄で手首に括り付けて持っている小さな瓶に入った古酒がたぷんと揺れる。この古酒、並みの酒ではない。急激に身体能力そのほかを強化できる代物なのだが、現存数が少なく値がやたらと張ったのであった。
「あ、見つけた!」
大きな声を上げ翼を揺らしながらマイト達に駆け寄ってきた紗雪にも手を挙げて応える。なにか不機嫌そうなベラにわかるようなわからないような視線を投げてから、彼女はマイトの手を取った。
「探していたんですよ、玖条さん見つけました……というか詰め所にいます。早く来てください。やっぱり本人がこないと話にならなくて」
「わかってる。失望させてしまっただけで、玖条は逃げてるわけじゃないんだ。僕がいかないと話にならない。案内してくれ」

「動けるようになったのかよ」
「まだなんとかね」
詰め所前についてみれば、なにをするでもなく玖条は建物を背にして寄りかかっていた。足元には荷袋のようなものがまとめてあり、すぐにでも何処ぞへでも行ける準備はすませていたようだが、こちらの姿を認めて近付くとすぐに声をかけてくる。マイトは目の前まで歩いて、軽く目を伏せた。
「でも限界が近いのは確かなんだ。隠していて悪かった」
「結局ここまでってことか……それならアタシはパーティ抜けさせてもらう」
建物から背を離し荷物と獲物を担いで歩き出そうとする玖条を制するように、目の前に手を掲げる。手に巻きつけた縄からぶら下がる瓶が水音をたてて揺れた。
「最後にみんなでパーッと騒がないか。このまま別れるなんて後味悪いだろ」
「誰のせいだ。そんな気分じゃねぇよ、勝手にやってな」
下から舐め上げるように睨み付けて、玖条は目の前の手を払った。払われた手を胸に引き寄せ目を閉じ嘆息を漏らすマイトの横を、そのまま一歩一歩強く踏みしめるように通り過ぎていく。
「なら僕と勝負しろ。君が勝ったら好きにすればいい」
「……その身体でか。バカにしてんのか?」
背中合わせの距離で首だけを振り向かせ、面白くもなさそうに鼻を鳴らして笑いとばし、握った拳を裏拳の要領で反転して打ち込んできた。それを同時に振り返った左手で受け止めて、マイトは落ち着いた声音で応えた。
「本気だよ」
拳を受け止められたまま、間近で顔を突き出し額が触れるほどの距離で睨み合う。鮮やかに燃える瞳が言葉よりも雄弁に心情を語っている。この島で遣り残したことを出来る範囲で残さないようにと。

どちらと言うこともなく、場所を変えて人気のない開いた場所に移動した。海辺が近い。潮の匂いがする。風邪で寝込んでいるエウリーネ以外のパーティメンバーも近場で見届けるつもりで集まっていた。
「一服だけいいかい?」
「好きにしろよ」
エウリーネの前では控えていた――特に彼女が本来の姿に戻ってからは――煙草を取り出すと一本咥えて火を灯した。人工肺いっぱいに吸い込んで吐き出す。退廃的な香りに脳が蕩けそうだった。
「……いつからそんなだったんだ?」
「初めからさ、この島に来たときから導火線には火が点いてた。この身体が壊れる前に……生身の身体でも手に入れる方法でも見つけるつもりで、なんとか騙し騙しやっていけると思ったんだけどね」
煙草を咥えて煙に目が染みて涙をこぼさないように空を仰いだ。風が強くなって煙が尾を引いて流れていく。煙草を指で摘んで握りつぶす。掌の内で燃やし尽くして開いた掌に卵形の魔法陣が浮かんでいた。
「――レッドドラゴンよ、末尾に宿れ」
魔術師が掌に浮かべた球体の魔法陣が肥大化し、術者を卵に内包するように包みこみ力を高めていく。力の召喚……文様は極致に至り、卵に見立てられる魔法陣にひび割れが走り裂けて火霊力が迸る。マイトは瓶の封を外すと、一気に中の古酒を煽り飲み捨てた。人造で強化された五臓六腑に染み渡り、感覚を痛みまでも鋭敏化して脈動する。
(更に寿命が縮まったかな……まだ保ってくれよ)
玖条も応えるように尾を立てて全身を活性化させて鼓動が高鳴っていく。牙を剥いて身体を引き絞れば筋が漲って張り詰める。距離はそれほど遠くはないが戦斧を振り回して当たる距離でもない、どちらかといえば魔術師有利ではあったが……玖条が飛び込んでくる。
一瞬で間合いを詰めて振り下ろすだけの小細工のない最速の一撃。重量のある戦斧が眼前を通過して、正に間一髪でそれを後ろに跳んで避けて掠めた服が千切れて舞った。勢いを伴った戦斧は地面を叩くことなく、勢いそのままに柄を一回転させて器用に玖条は構えなおし、そのまま追撃をかけてくる。魔術を放つ隙を与えない連続攻撃、それは魔術師に対する正攻法である。魔術を使わなければ身体能力は歴然としているのだから尚更だ。
(言うほど容易いことじゃないぞ、凶悪だよコイツは)
後退して体勢を崩したマイトが胸中で叫ぶ間に、今度は先程よりも近い間合いから更に深く踏み込まれ、玖条は横薙ぎに戦斧を振りかぶった。後退するのも左右に避けるのも難しい。この距離なら懐に飛び込むほうが安全だが、今の身体で密着しての攻防に競り勝つことも思い浮かべられなかった。地上でやりあって勝てる目もない、ならば。
相手の足元に前転をかけるように身体を丸めて飛び込んだ、頭上を戦斧が唸りをあげて通過していく。マイトはそのまま玖条の足元で回転倒立の要領で伸び上がるように両足を突き上げた。玖条は避けることもせずに片腕で受け止めると、力だけで上から潰しにかかる。差が歴然とした勝負を仕掛けるつもりもない、ミシリと身体が軋み負ける前に練り上げた魔術を行使する。
「早咲きの不死鳥」
自らの身体をフェニックスに変えて足先から不死鳥の嘴となり、玖条は炎の羽根に巻かれて巻き込んで上空へと突き上げる。上空へと連れ去った数秒後に魔術効果を失いマイトは人形の身体に戻って、更に玖条を上空へと蹴り剥がした。魔術行使の反動に耐えながら次の魔術を練り、魔石の瞳に玖条を捉えて立体型魔法陣で包み込み腕を掲げる。
「ブリューナクの幻影は疾る」
「脱っ!」
十三本の透明な刃が魔法陣の中へと殺到した。咄嗟に体勢を入れ替えた玖条が四つ尾を纏わせた足で虚空を蹴りつけ、呻き声をあげながら無理矢理にその中から脱出したがそれでも数本の刃を身に受けて、血が空に咲いていた。
「ぐぅっ……!」
その姿をマイトの瞳が追う――その視界から離れるように、更に四肢と四つ尾に力を入れて玖条は虚空を飛ぶ。マイトはと言えば、視界に映した魔法陣を踏んで中空を駆け抜けていた。空中戦での機動力が違いすぎる。頭上を取られ、腕力で戦斧を振るうがあっさりと懐に潜り込まれた。圧し掛かるように両手を押し付けられる。
「罪火のゲッシュ」
精神ごと灼く蒼い炎が玖条の胸の内で炸裂した。熱を引いて落下してそのまま地面に激突し土煙をあげる。その頭上から魔法陣でつくった階段をゆっくりとマイトは降りて地に足をつけた。

「あぢぃぃぃっ、!」
玖条の呻きが砂煙の中から響く、地上に激突した身体中の痛みもかなりのものだったが、それより未だに胸元で灯っていた蒼い炎が血を吐かせた。呻き声を上げながら胸元を掻き毟って握りつぶす。荒い息を吐き勢い立ち上がったが、フラリと揺れてぶれる視界に目を覚ますために自分の頬を打った。気合で正気に引き戻す。
マイトは自分の胸を見やると、そこには抉られた痕が。玖条に魔術を放つ間に、爪でも突き立てられて簡易とはいえ対刃繊維を織り込んだ服が切り裂かれている。空中戦なら流石に分はあるが、二度目は通用しそうもない。身体は軋みを超えて細かく壊れていく、焦りの中でゆっくりと息を吸い込んで言葉を練った。
「魔術なんてものは便利なだけの本当に微々たる力なんだ。君が戦斧を振るって叩き出した威力を出すために――僕は数百年の時を経た理論で、様々な助けを請い願わなければそれほどの威力を生む魔術を行使などできない。奇跡を為すとされる魔法だってそれは変わらない。理と法則を読み解き利用するだけのものだ。魔法とは世界の力、魔法使いなんて世界の威を借るだけの詐欺師に過ぎない」
独りごちるように、だがはっきりと響かせる声で魔術師は言葉を紡ぐ、相対してる者に見守るものに語りかけるように。右肩を前に左腕を引いて掌を伸ばして上に抜き手を矢に見立てるように引き絞る。
「決着をつけよう。玖条、その手一つで世界と僕を超えて見ろ」

「吼ォォォっ!」
玖条の獣染みた奇声が響いた。直進と錯覚する速度を以って転身し揺れながら迫ってくる。視覚に錯覚を催すほどの幻惑的な動きに、左に振りかぶった斧が一回転して威力が加わり右から襲い掛かってくる。待ち構えるマイトはその一撃を甘んじて受けようとするように何もしなかった。あまりに無防備な相手に一撃を振るう腕が緩むが、戦斧がマイトの"陽炎"を綺麗に捌く。一撃を振り切った玖条の肩に横合いからマイトの手がかけられた。
「気を抜いたな――殺す気でこい、葛葉玖条」
「っ!?」
一撃を放って隙のできた身体を横合いから殴り足首を蹴りつけると、利き腕を極めて玖条はマイトに組み伏せる。呪文は聞こえなかったのに、そう玖条の口が開きかけて呻きに変わった。呪文を使わない魔術もあるということに思い至る。魔術師の声が玖条の耳元で囁く。
「タラスクスの――」
「唖ァァァァ――!」
額に手を添えられ間髪いれずに魔術の詠唱が聞こえきて、玖条は何も……痛みもなにもかもを一切考えずに、力任せに腕を極められたまま抱え上げた。魔術を放つか腕を解いて離れるか躊躇する間にマイトは玖条に腕を絡ませたまま地面に叩きつけられた。激痛の中、更に投げ飛ばされる。
身体中に激痛を覚えながら、それよりも力だけであしらわれたことにマイトは驚愕の尾を引いた。地面を転げまわり仰向けになったマイトの上に、戦斧を振りかぶった玖条の影が落ちる。魔術を練る時間はない。腰裏に備えた銃把を右手で握り、バックサイドホルスターから引き抜いた拳銃を構える。

銃声と破壊的な音が響き渡った。

玖条の肩に銃創が刻まれ、彼女が持っていた戦斧は振り下ろしたまま手からすり抜け手放されていた。玖条は荒い息を吐きながら呆然とした表情で血が腕を伝って垂れている。その下には魔術師が戦斧に右肩を破砕されて横たわっていた。真っ赤な液体が溢れて流れていく。肩は粉々に砕かれ、骨や筋肉のような生物的な部品と、機械的な部品とが露になって散らばっている。
「君の勝ちだ」
静かな声でマイトは呟いた。ジワリと背中に鉄臭い液体が広がる感触に気持ち悪さを覚えながら見上げる。玖条はゆっくりと斧を振り下ろしたままの前傾姿勢から、背筋を伸ばしゴクリと喉を鳴らした。手を見ようとして肩が上がらないことに気付き、今更ながらに撃たれたと思い至った。身体が痛みを超えている。
その頃、ばたばたと仲間が駆けつけてくる足音が二人の耳に届いた。

「ほんっと、バカ。あんだけお膳立てして負けるなんてねー」
右肩に止血に緩衝材を詰め、包帯で固定応急処置を施して貰ったマイトにベラは長々と小言を溢していた。主に治療に当たっていた紗雪は色々と刺激が強かったのか、何故か誰よりも衰弱した風でもある。レイは相変わらずだ、こちらを見るともなしに見て意識は外に向いている。
「痛っでっ!?」
ベラの口上を半ば聞き流しながら、一人ひとりを見回って状況を確認していたマイトの傷口に激痛が走った。見ればベラが肩口を掴んで睨みつけている。抗議の声も上げられずに絶句、涙目。涙を呑んで痛みを耐える。ボロボロと飲み込めない涙が零れた。
「ヒトの話、聞きなさいよ。アンタ、左腕みたいに魔力で腕つくれないの?」
「……き、傷口に魔力で負荷かけられないよ、慣れるまでは」
彼の目の前には断ち切られた右腕が置いてあった。魔力の供給が絶え、血の通わなくなったそれは保存もできずにもう使い物にならない。そもよくよく見てみれば、断裂箇所も酷く使用できていたのが不思議なほどの酷使状況だった。
玖条もそれなりのダメージはあったが、魔術それも炎の攻撃は痛みと熱で苦痛を伴っても表面的なものが多いので処置が終った今となっては、ほとんどダメージも残らないだろう。どこに隠れていたのか彼女の義妹の魅風 イヅナがひょっこりと、その隣に居座っている。玖条は何か言いたそうにマイトを見ていたが、口を開くには至らないようだった。ため息をついて先にマイトが切り出した。
「僕の負けだ。約束どおり、好きにしなよ」
「あー……そうだったな。いや、いいさアンタが島を離れるまで付き合うよ」
「なんかあっさりしてるわね……」
「義姉さんは身体動かしてやっとスッキリして素直になったんです……意固地になりやすいんですから、こうでもしないと。すいません、ありがとうございました」
「いや、そんな……これでも本当に勝つつもりでやって、情けない結果だけどね」
抗議の声を上げようとして、ひと睨みで義妹に黙らされ、なんだか気まずそうに鼻の頭をこすって視線をそらすと玖条はそのまま深く座りなおした。マイトとしても礼を言われる程のことなんてなにもない。右肩を擦りながら弱く返すだけだ。この損失も無駄だとは思わない。なにか伝われば、玖条のほうに得るものがあればいいと願うだけだ。
けだるい身体から力を抜くと疲労した身体で長く細いため息を吐いて目蓋が下りる。魔力もほぼ全部を人工血液供給に廻して空っぽだ。抗えない睡魔に後ろから目隠しをされてそのまま意識が後方に落ちて……。

テーマ : 栗鼠ゲーム
ジャンル : オンラインゲーム

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

seramight

Author:seramight
(´・ω・`) アルカナ
装備なし時は経験値稼ぎどうぞ。

最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
カテゴリー
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

FC2カウンター
ブログ内検索
RSSフィード
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。